土佐錦魚の謎  PART2

 丸鉢について

 

 ここで丸鉢について、少し書き加えておきたい。高知に通い始めた頃、どこの飼育家を訪れても、モルタルの丸鉢と角鉢を見ることが出来た。今でも殆どそうであるが、特にこの丸鉢は土佐金飼育の上で、非常に高いウエイトを占める、必要不可欠のアイテムである。パート1でも述べたが、稚魚の時代を過ごさせる避けて通れない物がこの丸鉢である。勿論今、高知でもプランターを使用している人も少なくなく、私自身もプランターで十分代用が利くと思っている。しかしプランターがモルタルの丸鉢を上回っている訳では有りません。やはりその稚魚の出来はと言うと、なぜか品評会魚はモルタルの丸鉢から出てくる(私の場合)と言う事でも、秋になって差が出てきます。プランターは保温と言う事から言ってもモルタルの丸鉢より優れています。ですから夏までは、同じ腹から生まれた稚魚をモルタルの丸鉢と(ここからは丸鉢と書きます)プランターではプランターの方が、顔も体形も綺麗に出来ます。しかしそこから9月以降あまり伸びが有りません。しかし丸鉢は9月、敬老の日を過ぎて朝夕が涼しくなってくると昼間との水温差が激しくなって来ます。ここから急に丸鉢の中にいい物がボツボツと出てきます。「あれ、いつの間に」と言う位不思議です。急激に顔が尖り、所謂雰囲気のある当歳魚が出てきます。

 ここでもし「じゃあ、丸鉢を創ろう」と言うひとの為に少しだけそのポイントを書いておきます。創るための型ですが、これはアナタ自信が自作するしか有りません。FRPでアダムスキー型の元型を作りこれにモルタル(砂4対セメント1)でなるべく水を少なくして、よく練って流し込んで作ります。内径が58〜60CMの物を創り、よく乾燥させてから、薬局で氷酢酸を購入し(劇薬なので注意)水を一杯に張りこれに200CC位入れ3時間以上置きます。表面が削られ灰汁の抜けた丸鉢が完成します。但し完全に灰汁抜きをしようと思えば大型のプラタライをホームセンターなどで購入し丸ごと漬けて灰汁抜きする事です。ここまで書くと、丸鉢創りは実に大変な作業と思うでしょうから、やはりプランターをお勧めします。

 よく60cmのプランターが売ってないので45CMで代用してます、と言う人がいますが、私は使用したことが無く良いとも悪いとも言えません。しかし水量が60cmの半分以下でしょうから、好結果は得られない気がします。

 もう1つプランターのいい所を挙げるなら、やはり軽い事です。私自身もモルタルの丸鉢は40近く使用してますが、とにかく重い。栓を付けているから良いようなものの、とに角移動が大変です。プランターなら片手で持てますし、移動が簡単です。掃除も楽です。

 私は此れから土佐金の魅力に惹かれて、飼育しようと考えていらっしゃる方々に、入って来易いプランターでの飼育をぜひお勧めしたいと考えています。

 もう少しあく抜きについて付け加えるなら、酢酸でも代用出来ると思います。これも氷酢酸と同様な処理をするわけですが、氷酢酸は劇薬なので1度のあく抜きで、大体抜けますが、酢酸ですと、2,3度同じ作業を行い鉢の底に白い沈殿が現れ無くなるまで、続けます。

 私がかつてやった方法は、まず氷酢酸であく抜きしたあと、大型のプラたらい(100Lぐらい入るもの)または幼児用のプールに丸鉢を入れ、全体が水没するまで水を入れ、これにアクアマリンソフトと言うあく抜き剤をいれて3時間以上放置して、鉢を水洗いして乾かせば大体直ぐに使用出来ます。しかし不安ならばそれに水を張り、2,3週間後位から使用します。市販されている丸鉢は恐らくこのあく抜きがしてないと思うので、上記の処理をお勧めします。アクアマリンソフトは観賞魚店には殆ど置いてあると思いますし、ホームセンターでも扱ってる所も有ります。問い合わせて見て下さい。

 私のお勧めするプランターも、私自身は底をモルタルで塗って(掃気口と言う栓を付け)使用してます。こうすると軽いプランターもモルタルの重みで(と言っても2,3KG増えるだけだが)設置するのに安定感が出てきますし、栓を付けることによって水替えが楽になります。しかしこれも丸鉢同様TVショッピングで売ってる訳ではないので自作するしか有りません。プランターは60CMの物はどこのホームセンターでも売っている訳では有りませんので、園芸店とかJAなどで問い合わせて見て下さい。

 水換えについて

 ここでやっと水換えについて、説明致します。土佐金は水温の高いときは、とにかくさら水を好みます。8月には1日二回水換えしても、平気ですしかえって調子が良いくらいです。但しこの水換えと言うものは、環境によって凄く違ってきます。私は車庫の上で飼育しているので、1日中日が当たります。とても土佐金には適しているのですが、半そでを着ているあいだは、毎日ほぼ全換えです。当歳に丸鉢でミジンコを与えてる場合は、ミジンコが汚れを食べてくれるので、水換えも1週間に1度でいい場合もあるし、糸ミミズを与えるなら、これは毎日換えないと、稚魚の姿が見えなくなります。また糸ミミズによる水の汚れをほおっておくと、病気やガス病にほぼ成ります。2歳親魚も稚魚ほどではないにしろ、2日に一度は夏場は水換えを勧めます。しかし殆ど日が当たらず、水温もそんなに上昇しない環境ならば、水換えのペースは前記の2倍以上間隔を空けてもいいでしょう。但しここまで書いているのは、健康な魚を対象にしているのであって病魚は対象にしないでください。

 私は地下水(井戸水)を使用していますが、殆どの方は水道水だと思います。どちらの水でも汲み置き(エアレーションした物)を使うのは常識だと思いますが、水道水ならば、汲み置かないときはハイポを使用します。カルキが抜けていないものを使う事は避けた方が良いと思います。井戸水と水道水を比較した場合苔が生えやすい(水が出来やすい)のは井戸水であり、金魚も丈夫に育つと思います。しかし水道水は基準が全国一律であり(東京と高知では味が全然違うとは思いますが)使いやすい事は間違い有りません。

 次に水温合わせですが、基本は夏は同温か1,2度低いもの冬は同温か1,2度高いものを使用します。その逆は金魚を極端に弱らせます。必ず守ってほしい事項です。とにかく私は、金魚の病気の原因は99%水換えの遅れと餌のやり過ぎにあると思います。

 

 なぜ逆立ちするのか

 土佐金を飼育していて、秋以降に2歳魚、親魚がだんだん前傾して、やがてひっくり返ると言う経験を多くの方が経験してらっしゃると思いますが、なぜ土佐金は逆立ちするのでしょうか?別に私が断言できる訳では有りませんが、多くの場合は稚魚の時期の選別の誤りにあると思います。

 ではどんな間違いなのかと言うと、稚魚が孵化してから1ヶ月位でこの逆立ちうんぬんは、中々解りません。しかし鱗が生えだんだん土佐金らしくなり、夏場反転が出始めたときには、明らかになって来ます。ではどんな稚魚がそういう物なのか。スキーの競技でジャンプが有りますが、あれを思い浮かべて下さい。スターターが旗を振ると選手はジャンプ台を滑り、踏み切ってジャンプします。つまりこの動作をするものが、ほぼ逆立ちするようになります。泳ぐとき底の方に沈んでいき、そしてそのあと水面に向かって上昇してくる、このタイプの魚がそうです。ではなぜそういう泳ぎになるかと言うと、それらの魚は1、親骨(前骨)が硬い、2、尾芯が立っている、と言う2つの共通点が見られるはずです。更には体型的に言えば、丸手,中手が多い。もちろん長手にもいますが。

 また他の要因として、稚魚の時代、丸鉢飼育において糸ミミズをほぼ与える訳ですが、当然糸ミミズは鉢の底のほうでゆらゆらしていますが、これを魚は前傾して食べます。この癖が付くと魚は水面近くよりも底の方を主に突付いて、餌を探します。また、私もそうですが土佐金の場合、沈降性の人工飼料を与えるひとが多いと思います。これが益々前傾姿勢を助長します。やがていつも逆立ち気味に泳いだりする事が多くなり、特に3歳の晩秋の頃、急激に冷え込んだ夜とかに朝起きてみると、ひっくり返ってると言う事が今まで数多く経験してます。試合を圧倒的優位でリードしていたボクサーが、終盤一発のカウンターでそのままKO負けと言うパターンが有りますが、まさにそれです。ひっくり返ったら中々起き上がれません。

 

 それでは逆立ちさせないには、どうするか?まずこれは、選別で尾芯立ちと前の強いものを撥ねてしまう、そうすれば簡単な事ですが、実は品評会に出て行くような良魚はこの親骨が硬い物が多いのが現実です。何故か?それはつまり当歳で品評会で上位を狙うなら、当然前決めの出来たものと言う事になる訳で、親骨がぐにゃぐにゃしている物は、上位は狙いにくいものです。必然的に親(飼い主)の欲目でそういう前の強い物を残しがちになります。当歳の時はそういう物は見栄えがよく、「うーん、銘魚だ」などと勝手に思い込む訳ですが、2歳以降は泳げない魚になってしまい、やがてひっくり返り頭を擦り、可哀想な姿になってしまいます。

 魚を大事にする人は品評会用の魚は、2歳以降は10月下旬から、ヒーターを入れて13度以下に水温が下がらないようにするのですが、私みたいなメンドクサガリはついついヒーターを入れず、魚を駄目にしたりします(かつて2歳で優勝した魚を、冬の間ヒーターをいれず春先、ひっくり返った経験あり)。

 ひっくり返ると当然餌が思うように食べれませんから、やがて痩せて見事に駄金になってくれます。そうなれば当然処分しなければ成りません。ですから皆さんもこれと言う2歳、親魚は晩秋以降は特に気にかけて飼育してやって下さい。ただ、ヒーターを入れると言うことは、予想以上に水も蒸発しますので足し水にも気を配って下さい。

 以前は土佐金にはベビーゴールドを与える、と言うのが割と一般的だったのですが、土佐金は他の金魚程、消化吸収が優れていないので(泳ぎが下手な事が原因だろう)、消化の良い人工飼料をえらぶべきだが、それではどんな物が良いのか?

 ベビーゴールドの利点は浮遊性で有ると言う事で、土佐金が水面に向かって餌を探す癖がつく。しかし水温が低下するとこの餌は消化吸収と言う点で、?と思われる?しかもふやけ易いのも欠点だろう。

 私が今使用している物は、自分自身は土佐金に最適と考えている餌だ。しかしこの餌はO県のO市にある金魚屋の別注であり、しかも通販お断りと言う足を運んで購入するしか手の無い餌である。私自身も自分の分を確保するので精一杯である。ずばり、食い、糞の状態共に人工飼料ではかなりなレベルにある餌だろう。しかし、残念ながら、水には浮かない。

   続丸鉢について

  相変わらず、丸鉢の事に関するお問い合わせが多いので、再度付け加えたいと思います。特にあく抜きに関してですが、前記したように1度目は氷酢酸を使用してあく抜きします。但し気おつけなければならないのは、低温時にやると氷酢酸は15度以下ぐらいで氷結するので、あく抜きする時入れる水温はそれ以上のものを使用すると言う事です。つまり15度以下の水を使用すると氷酢酸は水に溶けずあく抜きが出来ません。ですから40度以上の温水を使用すれば、或は春以降であれば問題無いと言う事になります。特に高温の温水を使用すれば私の経験から、灰汁が良く抜けもう1度アクアマリンソフトを使用してあく抜きする時も、殆ど灰汁が出てきません。

 あと氷酢酸は大変丸鉢の表面を傷めるのですが、私が見てきた高知の多くの丸鉢は、砂の塊といった表現が当てはまる程セメントの地を感じさせない物が多く、それは結局表面がザラザラして鉢の掃除の時、誤って指とかを怪我する位の粗い感じの物が、良魚を作ると言うのが定説です。この事が1対4の割合でモルタルを作りなさいと言う事なのです。表面がザラザラならバクテリアが住み着き易いですし、水の出来も好いようです。

 うちにも丸鉢は40位有りますが、やはりセメントの割合が多かった物からは良魚は出来にくく、やはりザラザラした物から出て来易いようです。そういった意味でもあく抜きに氷酢酸を使用するのは理にかなっていると言えます。ですから通販などで、或は自作された丸鉢はこうして灰汁抜きされる事が望ましいと思います。但し前記したように氷酢酸は劇薬なので皮膚につかない様、ゴム手とかを付けて使用して下さい。

 

   糸ミミズについて

 糸ミミズは土佐金飼育に欠かせない物です。それは別の項でも随分述べて来ましたが、ここではその採取法と保存の仕方を、書いておきます。

 まず、糸ミミズのいるドブを見つけることです。少量の糸ミミズなら意外と皆さんの周りでも発見できるかも知れません。しかし、土佐金に与える量を確保すると言うことになれば、これは少量沸いてるとか言うレベルでは話にならないわけです。

 ではどれ位沸いていればいいのか?それはその糸ミミズの塊が少なくとも直径10CM以上ないと大した量ではないと言うことです。つまり、私などが採ってる場合は小さくてもホットケーキ位、大きい物はお好み焼き位の塊です。

 それで、そういう物が見つけられたとしてこれをどう言うふうに採るかですが、これはホームセンターで2,3Mの竹ざおを買い、ついでにラーメンの玉を湯きりする玉網を買って、それを竹ざおに針金でしっかり固定します。これで、あとフタツキバケツを買って準部OKです。そしてどぶの泥ごと掬ってバケツに入れ持ち帰り、泥より2,3CM上まで水を張ってほおっておくと糸ミミズが数時間後、少ない場合は半日又は一日後位に浮き上がってきます。これを洗面器やバケツにとり何度も水洗いします。それを水を張った洗面器に移し、エアレーションします(かなり強く)。この洗面器に入れる量は丼一杯を限度として、沢山採れた場合は何個も同じように用意して、エアレーションします。購入した糸ミミズも同様に保存すればかなり長期に保存できます。当然日のあたらない高温に成らない所が理想です。

 

   2歳魚、親魚の飼育

 最近戴いた質問に答えるうち、「そういえば、殆ど2歳、親魚について書いてないな」と思いまして、ようやくそのあたりを書く気になりました。別にこの項目は他のホームページに書いてあるから良いだろうと思ってましたが、私の言葉で書いた方が良い人も居るかなと、勝手に解釈して述べて行こうと思います。

 2歳、親魚で他の金魚との飼育をする上での違いは私の場合、4月以降殆ど更水飼育と言う点です。更に当然エアレーションするのですが、その場合少し弱めにプラ船の端の上のほうでやります。これは水流をなるべく作らないと言う事なのですが、やはり2歳、親魚ともなれば、体も大きく酸素の摂取量もかなり必要です。エアレーションなしで飼育すると、酸欠で死んだり(色々なケースによりますが)鰓が開きぱなしに成りがちです。また、プラ船の上に板を載せて日陰を作ってやります。この時の板の幅は私の場合、15から20CM位の物を載せます。飼育の数の目安ですが、80Lのプラ船で4月の時点で2歳が4,5尾、親魚が3尾程度と考え飼育していただければ、余り失敗はないと思いますが、寒冷地では更水飼育は5月以降になるでしょうし、それはあなた自身の判断で行ってください。私の魚は慣れているので、3月からでも更水飼育は平気(たまに風邪くらいは引きますが)です。それくらい家の場合は更水に強いので殆ど病気はしません。また私の場合は2歳以降は丸鉢で飼育しません。丸鉢はあくまで当歳までの飼育法と私は考えてますので。

 また餌についても、糸目が最高ですが、高価であるし、私の場合は人工飼料で充分と思ってます。当歳に糸目は必須ですが、2歳以降に必要性はあまり感じておりません。